年をとっても自分の歯でよく噛めることは、転倒予防や運動機能の維持、社交の意欲にも関わってきます。もちろん、栄養摂取面でもメリットが大きく、将来の寝たきりのリスクを下げることが分かっています。
歯根を包み歯を支えている歯根膜という器官は「噛んだ」という感覚をキャッチするセンサーで、噛むことによって伝わった情報から、脳が頭や体の位置を感知します。そのことで、バランスがとりやすくなり、結果的に姿勢を保ちやすくなるため、転倒しにくくなります。
高齢者の転倒によるケガの頻度は50〜70%にも達し、そのうち10%は骨折に至っています。転倒は、高齢者が寝たきりになる原因の12%あまりを占め、脳血管疾患や衰弱につぐ大きなきっかけになっています。また、実際に転倒していなくても、転倒するかもしれないという不安から、出かけるのが億劫になり、社交の意欲が低下し、出かけないからさらに体力が低下し、気力も低下するという悪循環に陥ってしまいます。転倒予防になるということは、身体面ではもちろん、精神面でも高齢者の方の元気な老後に繋がるのではないかと思います。